犬は人間と違って服を着ていないし、舌を出すことで体温調節しているから暑さ対策は必要ない…と思っている飼い主さんは意外といるのではないでしょうか。
しかし実際は犬だからこそ、猛暑の夏にはしかるべき対処を行って熱中症のリスクを低減することが大切です。
犬は人間と違って体調不良を言葉で訴えることはできないので、飼い主がしっかり暑さ対策を行い、犬が毎日快適に過ごせる環境を整えるようにしましょう。
人間の場合、熱中症のリスクは梅雨明けあたりから急激に上昇します。
一方、犬の場合は5月の上旬、ゴールデンウイークあたりから熱中症にかかりはじめると言われています。
人間に合わせて、梅雨明け頃から暑さ対策を始めると熱中症になる確率が高くなるので、早め早めの対策を取り入れるよう心がけましょう。
犬の散歩は基本的に毎日行うものですが、暑い時期は散歩をする時間帯に注意が必要です。
夏期は午前10時頃からぐんぐん気温が上昇しはじめ、お昼あたりをピークに、夕方16時頃まで気温が高い状態が続きます。
この6時間のあいだに散歩に行くと、人間はもちろん、犬だって熱中症の危険性が高くなります。
特に注意したいのがアスファルトの上を歩く時。
アスファルトは熱を蓄える性質を持っているため、夏場は表面温度が50℃以上に達することもあります。
犬は人間に比べて地面に近い位置にいるのでアスファルトの熱の影響を受けやすいのです。
そのことから、熱中症になるリスクはかなり高いと言えます。
犬の散歩の時間帯は人間のライフサイクルに合わせていることが多いので、大幅に変えるのは難しい場合もあるでしょう。
ですが、できれば夏場の散歩は午前9時頃までに済ませるか、あるいは17時以降に行うとよいでしょう。
どうしても日中に散歩しなければいけない場合はアスファルトを避け、土や草地の上を歩いたり、日陰の多い場所を選んだりして散歩させるのがベストです。
室内で犬を飼っている場合、飼い主が出かけるとなると当然家の中で留守番させることになります。
防犯の関係上、窓を開けることはできず、閉めきった状態での留守番となりますが、夏場の室温は非常に高くなりやすく、たとえ室内にいても熱中症になる危険性は大。
実際、ペットの犬が熱中症になるケースは屋外よりも室内や車内にいた時の方が多いそうです。
とはいえ、仕事などの関係で犬を留守番させなければならない人も多いでしょう。
そういう時はエアコンをかけた上で、カーテンを閉めて直射日光が入らないようにしていきましょう。
ただ、人間が涼しいと感じる温度だと、犬にとっては冷えすぎる可能性があります。「少し暑いかな?」と感じる程度で十分なので、低温に設定しすぎないようにしましょう。
また、うっかり犬がスイッチを押してエアコンを切ってしまうことがないよう、手の届かない場所にリモコンを置いておくことも大事です。
なお、最近のエアコンには当たり前のように省エネモードが搭載されていますが、人感センサー搭載の機種には要注意。
本来であれば人間がいるかどうかを感知してスイッチを自動でON/OFFに切り替えてくれる便利な機能なのですが、機種によっては犬を感知してくれず、勝手に電源が切れてしまうものもあります。
実際、人感センサーが反応してくれず、帰宅してみたら犬が熱中症で倒れていた…という事例も報告されていますので、人感センサー付きのエアコンを使って犬に留守番させる場合はセンサーをオフにして、手動でエアコンを付けるようにしましょう。
人間同様、犬の暑さ対策には水分補給が欠かせません。
こまめに水分補給させ、脱水症状にならないよう注意しましょう。
また、水は常に新鮮な状態をキープするのが大切。
特に夏場は雑菌が繁殖しやすいため、長時間水を放置していると不衛生な状態になってしまいます。
水は大きめの容器にたっぷり用意して、午後になったら水の残量にかかわらず新しいものに取り替えるようにしましょう。
犬は気温が高くなると、木陰の下や水辺、日陰の地面など自然と涼しい場所に移動する傾向にあります。
ただ、屋外で飼われている犬は鎖でつながれているので、移動できる範囲が限られてきます。
その中に涼を取れる場所がないと犬は逃げ場がなくなってしまい、熱中症になる危険性が高くなります。
犬小屋なら直射日光は防げますが、熱がこもりやすいので、簡易的な屋根を屋外に設置するなど、日陰を作ってあげるとよいでしょう。
室内犬の場合はペット用の冷却シートなどを敷いてあげると暑い夏場の「避難所」として活用できます。
なお、手っ取り早く人間用のアイスノンを使う人がいますが、犬が噛みちぎってしまう可能性があるのでNG。
アイスノンにはエチレングリコールという毒性がある成分が含まれているものがあります。このようなアイスノンを噛みちぎってしまうと、毒を経口摂取すると中毒を起こすおそれがあります。
食べた直後は特に症状が現れないので油断しがちですが、しばらくすると嘔吐や下痢、多飲多尿、ふらつきといった中毒症状が出現。
さらに悪化するとけいれんや血尿、気絶といった症状が出始め、ひどい場合は腎不全を起こし、死亡率が高くなると言われています。
エチレングリコールはワインの甘み成分として混入されていたこともあるほど甘味が強いので、犬が保冷剤を噛みちぎって中身を出してしまった場合、なめたり食べたりしてしまう可能性があります。
アイスノンや保冷剤の外袋は意外にもろく、小型犬の歯でも簡単に穴があいてしまうので、アイスノンを使うのなら必ずペット専用のものを用意しましょう。
犬の毛は人間から見るととても暑苦しく、短くカットしたら涼しくなるのでは?と思ってしまいがちです。
たとえば見た目がかわいいと話題のサマーカットはその最たる例で、地肌が見えるほど毛が短くカットされています。
確かに見た目は涼しげですが、もともと犬の毛は地肌を守るために存在するものなので、あまりに短くカットすると直射日光から体を守れなくなってしまいます。
また、犬の毛には断熱材のようなはたらきがあるため、サマーカットにすると地肌に熱が伝わりやすくなってしまうという欠点も。
ほどほどにトリミングするなら問題ありませんが、「見た目が暑そうだから」という安易な考えで地肌が見えるほど短くカットしてしまうのはやめましょう。
近年は地球温暖化の影響により、酷暑となる年が増えてきました。
人間はもちろんですが、犬も猛暑にさらされれば命の危険性があります。
特に犬は人間より暑さを感じやすい傾向にあります。そのため、人間が暑さを感じ始めるより前にしっかりとした対策を講じるようにしましょう。